有識者セミナーレポート

元 味の素株式会社 常務執行役員
ASEAN 事業統括責任者・タイ味の素社長が語る
ASEAN 事業を成功に導くための戦略の組み立て方
市場魅力度×競争優位で再設計する海外戦略の原理原則

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ASEAN 市場は、高い経済成長率と膨大な人口を背景に、多くの日本企業にとって「宝の山」と映ります。しかし、その実態は、国ごとに異なる宗教、民族、歴史、そして複雑な行政リスクが絡み合う「カオスの宝島」でもあります。自社の実力を過信し、現場の現実を見誤れば、どれほど優れた製品であっても、市場から退場を余儀なくされます。

本レポートでは、味の素株式会社で長年 ASEAN 事業の陣頭指揮を執り、タイ味の素社長やアセアン本部長を歴任された 本橋 弘治 氏が登壇しました。味の素が数十年にわたり現地で培ってきた「泥臭い」現場主義と、市場魅力度および競争優位を軸にした緻密な戦略立案の要諦、そして「学びの早い」組織をいかに構築するかについて、実体験に基づいた深い知見が語られました。本レポートでは、その内容を詳細にお届けします。

登壇者プロフィール
本橋 弘治
味の素株式会社

アドバイザー(2025年7月~現在)以下の外部団体と兼任
民間外交推進協会 理事 
日アセアン文化経済委員会 委員長

日本スープ協会 会長
特定非営利活動法人 日本食レストラン海外普及推進機構 理事
公益財団法人 食の安全・安心財団 理事
1986年味の素株式会社入社。人事労務、国内外の営業、海外事業を歴任。フィリピン味の素ダイレクターやベトナム味の素社長、食品事業本部アセアン本部長等を務め、グローバル領域で手腕を発揮。2021年より味の素デジタルビジネスパートナー代表取締役社長として SSC の業務変革を推進。2025年6月、同社アドバイザーに就任。長年培った人事・海外事業・DX の知見を活かし、組織変革に貢献している。

登壇者の歩みとパーパス

皆さん、こんにちは。本橋 弘治 です。私の個人的なミッション、いわゆるマイパーパスは、「楽しさとおいしさの笑顔を届ける」ことです。これを人生の生きがいとし、働くモチベーションの源泉として大切にしています。

私のキャリアゴールは、「学びの早い世界第一級のビジネスパーソン」になることです。この「学びの早い」という言葉には、自分なりの強いこだわりがあります。現場で現実をしっかり見て、早く深く考え、本質的な課題を一言で言い当てる。これこそが、ビジネスパーソンにとって最も重要なことだと考えています。

また、私は「ドリームマネジメント」という活動も行っています。100個の夢を追いかける「ドリームノート」を作り、夢が叶った日付を書き込んでいくのです。自分の夢を追いかけるようになると、不思議と家族や同僚の夢の実現も支援したくなります。こうした「世のため人のために楽しく働く」という姿勢が、特に40代以降、海外で仕事をする上での大きな原動力になってきました。


私の経歴を振り返ると、39歳以降、一貫して海外食品事業、特にアセアン地域に関わってきました。人事労務から国内営業、海外法人管理、そして現地法人の社長まで、幅広いキャリアを歩んできました。

アセアンでは、フィリピン、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナムといった主要国に加え、カンボジアやミャンマー、パキスタンなど、ほぼ全域での事業展開に携わってきました。

それぞれの国で直面した課題は異なりますが、常に心がけていたのは、自分の経験を「言語化」して整理することです。A4一枚程度に、自分の実績や学びをまとめ、自分なりの「引き出し」を作っておく。そうすることで、似たような問題に直面した時や、アドバイスを求められた時に、すぐに解決策を提示できるようになります。


私のモチベーションは、現場で何かを成し遂げ、それを仕組みとして定着させることにあります。

人事労務時代には、年金制度の改定やリスクマネジメントシステムの導入、営業時代には大手スーパー向け留型調味料の導入、そして海外事業では既存事業の拡大や PMI の推進などに取り組んできました。
特に海外では、不採算工場の閉鎖といった厳しい決断を迫られることもありましたが、常に「世のため人のため」という視点を忘れずに取り組んできました。



ASEAN 市場の現実と誤解

アセアン進出を検討する際、多くの企業が陥りやすい「あるある」とも言える誤解が11個あります。

まず、日本と比べて経済成長率が高いという理由だけで、「魅力的に見える」ことです。しかし、製造業が育つ前にサービス業が発達してしまい、若い労働人口がそちらへ吸収されている現状があります。これが将来の競争優位性にどのような影響を与えるのか、慎重に見極める必要があります。

また、「都市部だけを見て国全体の状況と誤認する」ケースも非常に多く見られます。ジャカルタやマニラだけを見て、「すごい発展だ」と判断するのは危険です。内需をターゲットにする製造業であれば、国全体、さらには社会階層ごとの生活習慣の違いまで深く理解しなければなりません。

さらに、自力で調査をせずにコンサルタントへ丸投げすることや、トップの情熱を忖度して冷静な判断を誤ることも、失敗の典型的なパターンです。投資ばかりに目が向き、実際にキャッシュを日本へ回収できるかを十分に検討していないケースも散見されます。

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