有識者セミナーレポート
味の素社の「グリーンフード事業」に学ぶ
〜大企業の「壁」を破る海外新規事業の実行術〜
大企業の中で新規事業を立ち上げ、軌道に乗せることは容易ではありません。既存事業との兼ね合い、社内評価、意思決定のスピードなど、数多くの「壁」が立ちはだかります。本セミナーでは、味の素株式会社にてグリーン事業推進部をリードする小澤由行氏をお招きし、シンガポールで展開する新ブランド「Atlr.72®(アトリエ・セブンツー)」の事例と、その裏側にある社内の「壁」を突破するための具体的な実行術について、脳科学的アプローチや管理会計の工夫を交えながら語っていただきました。
登壇者プロフィール
小澤 由行 ⽒
味の素株式会社 コーポレート本部
グリーン事業推進部 戦略グループ長
1997年入社、国内リテール食品事業(営業/事業部門)に12年従事した後、海外リテール食品事業(タイ、ベトナムに赴任)に9年従事。2018年より経営企画部にて経営戦略の策定、事業モデル変革の推進に従事。2023年4月、新規事業開発担当執行役と共にグリーン事業推進部を新設。2024年8月、食を通じて、人と地球のより良い未来に貢献する「Atlr.72®(アトリエ・セブンツー)」ブランドをシンガポールにてローンチし新規事業開発をリード。
味の素グループの全体像
企業概要とアミノサイエンス
本日は「大企業の壁を破る海外新規事業の実行術」という、やや仰々しいタイトルではありますが、皆様が日々直面されている課題の解決に向けたヒントをお伝えできればと考えています。本題に入る前に味の素株式会社について簡単にご紹介します。
味の素グループの歴史は1908年、東京帝国大学の池田菊苗博士が昆布だしに含まれるアミノ酸の一種であるグルタミン酸が「うま味」の成分であることを発見したことから始まります。その翌年である1909年に、世界初のうま味調味料「味の素®」を発売し、創業しました。創業の志である「おいしく食べて健康づくり」は、現在のコーポレートスローガン「Eat Well, Live Well.」へと受け継がれています。私たちは、「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をグループパーパスとして掲げ、2030年までに環境負荷を50%削減し、10億人の健康寿命延伸を実現することを目標に取り組んでいます。
味の素グループは、最初の製品がアミノ酸であったことから、アミノ酸を軸に事業の多角化を進めてきました。アミノ酸には、「呈味機能(おいしさ)」「生理機能(体の調子を整える)」「栄養機能(栄養を届ける)」「反応性(新たな機能を生み出す)」という4つの機能があります。これらの機能を展開することで事業を成長させてきました。2024年3月期の実績では、売上高は1兆5,000億円超、事業利益は約1,600億円となっています。食品事業の構成比が約8割を占めているため、多くの方に食品メーカーとして認識されているかと思います。現在は、世界31の国と地域に拠点を構え、約35,000人の従業員が働いています。
なお、アミノ酸について補足しますと、人間の体の約20%はタンパク質でできています。このタンパク質は、わずか20種類のアミノ酸がつながることで構成されています。食事から摂取したタンパク質は一度アミノ酸に分解されて吸収され、遺伝子の設計図に従って筋肉や皮膚などに再合成されます。つまり、体をつくり、動かすためにアミノ酸は不可欠な存在であり、「命のもと」とも呼ばれています。
4つの成長領域
現在、味の素グループでは、リソースを集中させて事業成長を目指している4つの成長領域があります。一つ目は「ヘルスケア」です。先進医療モダリティへのソリューション提供から健康寿命の延伸まで幅広く貢献しています。二つ目は「フード&ウェルネス」です。生活者一人ひとりの視点に寄り添い共感しながら、日常の暮らしの中でWell-beingの向上に貢献します。三つ目は「ICT」です。半導体の進化やスマート社会の実現を支えています。そして四つ目が「グリーン」領域です。喫緊の環境課題にアプローチしながら、サステナブルな食の提供やバイオサイクルの実現に貢献していきます。本日は、このグリーン領域にフォーカスしてお話を進めていきます。
・・・(続く)
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