有識者セミナーレポート

中国のデジタルトレンド2022〜BATH・TMDP9社の成長戦略を読み解く〜

世界規模でデジタル化が急速に進展している中で、近年注目を集めている国が中国です。AI・ブロックチェーン・クラウド・ビッグデータ・5Gをはじめとしたデジタル基盤をベースに、次々と新しいデジタル技術や、それらを応用した新しいサービスが生み出されています。

特に、中国を代表するプラットフォーマー4社である”BATH”(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)や、 次世代プラットフォーマーとして台頭してきている”TMDP”(バイトダンス、メイトゥァン/シャオミ、ディディ、ピンドゥオドゥオ)の5社は加速度的に成長しており、既に日本国内でも多くのデジタル技術や関連サービスを展開しています。 

そこで今回は、「チャイナテック〜中国デジタル革命の衝撃」の著者であり、株式会社伊藤忠総研の主任研究員である趙 瑋琳様をお迎えし、BATH・TMDP9社の成長戦略や、中国の最新デジタルトレンドについてお話いただいたセミナーレポートをお届けします。

登壇者プロフィール

趙 瑋琳(チョウ イーリン) 氏
株式会社伊藤忠総研 産業調査センター 主任研究員

中国遼寧省瀋陽市出身。2002年に来日。2008年東京工業大学大学院社会理工学研究科修了、イノベーションの制度論、技術経済学にて博士号(学術)取得。早稲田大学商学学術院総合研究所、富士通総研経済研究所を経て2019年9月より現職。中国の産業動向、特にデジタルイノベーションとその経済社会への影響に関する研究を行い、プラットフォーマーやテックベンチャーなどの先端企業に詳しい。著書に『BATHの企業戦略分析:バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの全容』(日経BP社)。近著に『チャイナテック:中国デジタル革命の衝撃』(東洋経済新報社、2021年1月)

デジタルチャイナを目指す

2021年、中国はコロナとの戦いでテック企業が活躍しました。具体的には、自動搬送用のロボットやドローン、自動運転車による物資の配送、大人数の体温測定を一気に行うAIシステムなど、たくさんのデジタル技術が役割を果たしました。

こうした中国のデジタル技術は昨今大きな注目を集めていますが、決してコロナ禍で急速に普及したわけではなく、実はそれまでに中国の経済社会に根付いていたものです。

1978年以降の中国の経済成長、いわゆるチャイナイノベーションを支えてきた原動力はどこにあるのでしょうか。それを語る上で欠かせない重要な要素が「グランドデザイン」「地域間競争」「民間の活力」の3つだと考えています。

まずはグランドデザインです。中国は独自の政治体制があり、基本的には中央政府が長期的な戦略をつくり、地方政府がそれに呼応する形で動いていきます。もうひとつが地域間の競争です。中国は地域と地域の間に競争のメカニズムを導入しており、それが中国経済に大きな影響をもたらしています。地方の発展が進めば、地方のトップが中央政府の出世に繋がる仕組みもあるため、地方の幹部たちのモチベーションが高くなっています。

そして、私が最も重要だと考えているのが民間の活力です。中国では民営企業がたくさんあり、民営企業の発展があったからこそ中国の経済成長が進んでいきました。この部分について、もう少し詳しく見ていきましょう。

数字が語る中国企業の成長

米国経済誌「フォーチュン500」のランキングは日本ではあまり関心の高い指標ではありませんが、中国企業はひとつの目標にしています。そのランキングを見ると、2005年はわずか16社しかランクインしていませんが、2019年には129社がランクインし、初めてトップになり、2020年は135社で米国企業、日本企業を追い抜いています。

また、「フォーチュン500」にランクインできる企業の予備軍と言ってもいいと思いますが、ユニコーン企業の成長も著しいです。米調査会社CB Insightsのデータによれば、2021年9月時点で世界のユニコーン企業のリストでは、米国発が405社で最も多いのですが、中国発166社の2位となっています。ちなみに米中の2カ国で全体の7割を握っている、という状況です。

こうした経済の発展の先に中国が目指すのは「デジタルチャイナ」です。2021年から「第14次5カ年計画と2035年目標」が始まりましたが、これまでもデジタルエコノミーに注力するという国の政策はありました。それがここに来て明確に第14次5カ年計画の中でデジタル化の進展を加速し、デジタルチャイナを建設することを名言しています。

具体的には経済、社会、行政、産業というそれぞれの側面からスピード感を持った社会実装で利便性、効率性、安全性の高い社会の実現を目指しています。・・(続く)

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