有識者セミナーレポート
「アウェイな新規事業」をどう成功させたか?
大手製造業出身の事業責任者が語る
部門を巻き込む実践論
本レポートでは、世界初のコンパクト360度カメラ「RICOH THETA(リコー・シータ)」の生みの親である 生方 秀直 氏が、大企業における新規事業創出のリアルな突破プロセスを語ります。社内で「異分子」や「招かれざる客」として扱われるアウェイな環境下において、いかにして経営陣を巻き込み、技術的・事業的な障壁を乗り越えて市場を創出したのかを明らかにします。10年以上の歳月を経て、ガジェットから「文化」へと昇華させた軌跡と、成功に必要なプロジェクト実践論を詳しく解説します。
登壇者プロフィール
生方 秀直 ⽒
コネキス株式会社 CEO
革新的 VR 映像体験の開発・事業化にチャレンジする現役起業家。あらゆるステージの新規事業創出プロジェクトをハンズオン型で支援中。30年間の株式会社リコー勤務時代は、商品企画担当から5年間の経営企画を経て、ゼロからの新規事業創出プロジェクトを複数リード。2019年にはリコーからのカーブアウトスタートアップ、ベクノス株式会社を設立。
異分子としての新規事業
全ての会社は新規事業から始まる
新規事業というものは、社内において「異分子」であり、「招かれざる客」であり、時には「邪魔な存在」だとさえ思われてしまう、まさに「アウェイ」な存在です。しかし、ここで皆さんに思い出していただきたい哲学的な問いがあります。それは、「全ての会社は新規事業から始まっている」という事実です。

例えばリコーの場合、現在では数千億円、数兆円規模の事業を持つ大企業ですが、その原点は、理化学研究所が発明した「理研陽画感光紙」というコピー用紙の原型のようなプロダクトを事業化するために生まれた「理研感光紙株式会社」でした。最初は売上ゼロからのスタートで、創業チームが七転八倒しながらマーケットを作り上げ、現在の偉大な企業へと発展していったのです。長年にわたってコア事業が巨大化する中で忘れ去られがちですが、イノベーションなくして企業の成長はあり得ません。
既存事業とのパラダイム相克
新規事業がなぜ「アウェイ」になるのか。それは、既存事業と新規事業とでは「パラダイム」が根本的に異なるからです。
既存事業は、積み上げられた過去のトレンドに沿って未来を投影する「確実性のマネジメント」の世界です。プロダクトの価値もマーケットもすでに確立されており、計画経済的に着実な利益確保が求められます。一方で新規事業は、見えない未来を夢想する「不確実性のマネジメント」です。プロダクトが実現するかどうか、真の顧客が誰なのかも分からない中で、柔軟に計画を修正し続けなければなりません。
このパラダイムの違いが、「既存事業が創出した利益が、投資先行の新規事業の経費に充てられている」といった不幸な対立、いわゆる「越えられない谷」を生んでしまうのです。
組織に「揺らぎ」を与える意義
大組織はどうしても硬直化や官僚化が進みがちですが、その状態では新しいものは生まれません。新規事業は、あえて組織に「揺らぎ」を与えるイノベーションマネジメントの一環として捉えるべきです。経営の根本原理として、土台となる既存事業(屋台骨)と、次なる成長を生み出す新規事業(果敢なチャレンジ)のバランスをどのように取るか。この感覚こそが重要になります。
経営陣が果たすべき役割
既存と新規のバランサー
既存事業と新規事業の対立を解消し、両者のバランスを取るための唯一の「バランサー」は経営陣です。
経営陣が「既存事業も新規事業も、どちらも我が社には必要であり、どちらもやる」と明確に宣言し、それを実践することが不可欠です。単に精神論を語るのではなく、新規事業のダウンサイドリスクを財務ポートフォリオの中で明確に位置づけ、組織的な仕組みとして運用しているかどうかが問われます。
経営戦略としての位置づけ
新規事業は、IR対策や単なるトレンド追従のための「ファッション」であってはなりません。経営戦略の骨格の一部として、明確に組み込まれている必要があります。私自身も、当時の経営トップに「コンシューマー事業を広げたい」という明確なオーナーシップがあったからこそ、このプロジェクトをスタートさせることができました。
挑戦者を鼓舞する人事施策
人事施策も極めて重要です。アウェイな環境で孤独に戦う挑戦者を経営として鼓舞し、時には部門長レベルに対しても新規事業への貢献を評価項目に組み込むなどの仕組みが必要になります。また、意図的な人材のシャッフルによって組織に「揺らぎ」を継続的に与えることも、組織能力を高めていく上では欠かせません。
・・・(続く)
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