有識者セミナーレポート

元外資系自動車メーカー執行役員が語る
世界の自動車マーケット最新動向
〜いま日本企業に求められるマーケティング判断と経営戦略とは〜

自動車業界は現在、世界的に大きな変革期を迎えており、マーケットとテクノロジーは急速に変化し、電気自動車(EV)や自動運転技術などの革新的な進歩は業界にパラダイムシフトをもたらしています。Tesla(テスラ)の躍進や中国新興EVメーカーの台頭などによって、自動車市場に変革が起き、伝統的な自動車メーカーにも影響を与え、業界全体の競争が激化しています。

そのような中で、世界のマーケットを理解すること、業界全体の変革に取り残されない競争戦略を立てることが重要な鍵になっています。現在、世界の自動車市況はどのようになっているのでしょうか?また、いま日本企業に求められる経営戦略はどのようなものなのでしょうか?

今回はUndertones Consulting株式会社 代表取締役社長 前田 謙一郎 氏をお迎えし、世界の自動車市場状況、テスラや他メーカーの最新動向について講演いただいた模様をレポートします。

登壇者プロフィール

前田 謙一郎 氏

Undertones Consulting株式会社
代表取締役社長

上智大学経済学部を卒業後、ヨーロッパで自動車関連メーカーに勤務。帰国後は複数の自動車メーカーを経て、2016年からテスラ シニア・マーケティングマネージャー、2020年よりポルシェ マーケティング & CRM 部 執行役員。テスラではモデル3や旗艦店を立ち上げ、ポルシェではブランド初の EV タイカンを日本に導入。MLB 大谷翔平選手とポルシェのアンバサダー契約を結ぶなど、マーケティングや電動化で実績を残す。2023年 Undertones Consulting株式会社を設立。

世界の自動車業界とパラダイムシフト

テスラ「モデルY」の躍進

まず、世界の自動車業界とパラダイムシフトについて見ていきたいと思います。パラダイムシフトは、身近においても多くの人が一つや二つは経験しているのではないでしょうか。古くは馬車から自動車になったことも大きなパラダイムシフトですし、私が大学時代に使っていたフィーチャーフォンも2006年にiPhoneが発売されて急激に変わっていきました。

カメラに関してもフィルムからデジタルに移行したことからもわかるように、どのようなテクノロジーも技術進化に伴い、代替されることが歴史から読み取れます。

自動車業界について言えば、2023年テスラの「モデルY」が世界で一番売れたモデルになりました。それまでは十数年、トヨタのカローラが売れていたのですが、2023年からモデルYが電気自動車、ガソリン車も含めて一番売れたモデルになったのです。同時に、テスラはスーパーチャージャーを北米充電規格(NACS)として他自動車メーカーに開放し、多くの競合メーカーが採用を表明しました。そして中国のBYDについては2023年Q4にはBEVの販売台数トップとなり、市場全体においても従来のリーダーであったフォルクスワーゲンを抜きました。

2024年も彼らの勢いは止まることを知らず、躍進を続けている状況です。10月に出張した上海で何台も見かけましたが、スマホメーカーのシャオミ「SU7」のような全く新しい観点から作られた電気自動車も登場してきてます。中身もデジタル化されおり、最新なイメージを持ちました。

実際に上海の街中を歩いてみると、こういったシャオミやファーウェイのような新興自動車ブランドが、アップルストアのように自動車とスマホ、ホイール、カラーのトリムを一緒に売る店舗を展開しています。こういうのを見ると、中国では自動車は家電の一部なんだろうと感じます。

また、プレミアムEVメーカーのNIOも彼らのスマートフォン「NIO Phone」を出しており、中国では自動車とスマホがシームレスに統合され、AIの統合とデジタル化が急速に進んでいます。

そういったパラダイムシフトが起きる背景にはご存知の通り、気候変動、そして政治や政策があります。脱炭素化というのは大きなグローバルアジェンダであり、ヨーロッパでは2035年までにはガソリン車の販売が禁止となります。

アメリカは州ごとによって違ったレギュレーションがありますけど、特に西海岸においては引き続きガソリン車に対する規制は厳しい状況です。日本に関しては、2050年カーボンニュートラルの目標を掲げていますが、ハイブリッドも電気自動車の中に入っているという特殊な状況です。

成長する世界の自動車マーケット

その状況でグローバルの自動車販売台数を見ると、2023年は約8600万台の新車販売がありました。特に顕著だったのが、中国マーケットがついに3000万台を超えたことです。2024年も特に中国と北米が増加見込みです。ヨーロッパと日本は横ばいもしくは多少減少するでしょうけれども、2024年も8800万台程度の新車販売台数が見込まれています。

その8800万台の中で、どれくらいがEVか。2023年には約1370万台をPHEVとBEVが占めていました。その中で、BEV単独では 約949万台、PHEV単独では 約420万台でした。世界では確実に電気自動車市場は成長を継続していることがわかるかと思います。

直近の数字をみるとBYDは2024年には400万台のメーカーに成長することが予測されています。彼らは2024年1月〜11月に374万台を販売し、この拡大の流れは続くでしょう。

同時に、テスラも180万台の車を2023年はデリバリーしてますが、2024年も同レベルの180万台をデリバリーする予定です。なおかつ、彼らは2025年に廉価モデルや新型モデルYを投入し、販売台数を増やそうとしてます。

中国の自動車市場の変遷について、BYDを含めて、様々なローカルメーカーが躍進してます。中国メーカーの市場シェアは2020年に全体の43%から、2024年には62%にシェアを拡大しようとしています。

3000万台の市場サイズの中で中国メーカーが拡大すると、縮小メーカーもあるわけです。日本メーカーやドイツメーカー、アメリカブランドなど、2024年はかなりシェア台数を落としている、という状況です。

世界全体のEVシェア予測を見ると、IEA(国際エネルギー機関)が、こういった予測をしてます。2023年は約1400万台のシェアで、販売された車の5台に1台が電動車でした。このEV市場は引き続き拡大し、2024年は1600万台を超えると予測されています。

・・・(続く)

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