有識者セミナーレポート
元 パナソニック、ヤンマーホールディングス出身者が語る オープンイノベーションを活用した
新規事業を生む意識と環境作り
ゼロからの事業化までの取り組み
日本を代表する大企業であるパナソニックとヤンマー。対照的な企業文化を持つ両社で新規事業創出に邁進してきた小山 博幸 氏。本レポートでは、小山氏が実際に直面した「大企業の壁」や、それを打破するために導入した「オープンイノベーション」と「デザイン思考」の実践手法を詳しくご紹介します。草の根の社員提案制度から、産学連携によるグローバルな開発プロジェクト、そして水上パーソナルクラフト「Wheeebo」の事業化における壮絶な舞台裏まで、実体験に基づいた「成功と失敗の本質」をお届けします。
登壇者プロフィール
小山 博幸 ⽒
Dream Creation Lab合同会社 業務執行社員
(Chief Technology/Innovation Officer)
パナソニック、ヤンマーホールディングスにて、海外企業・大学とのアライアンスやオープンイノベーションセンターの設立・推進、新規事業創出に従事。Stanford 大学 Design Thinking Research Program に参画し、デザイン思考を活用したアイデア創出から事業化までを実践。現在は Design Thinking を軸に、様々な課題に対するソリューション提供や、企業の新規事業創出を支援。
新規事業の本質と大企業の壁
新規事業の3タイプと提供価値
本日お話しするのは、大企業における新規事業創造の実例と、そこで直面する課題についてです。一口に「新規事業」と言っても、その中身はいくつかに分類されます。
まず、既存の顧客に対して新しい価値を提供するタイプです。例えば、DVDレンタルから自社コンテンツ制作へと舵を切った Netflix などがこれに当たります。次に、既存の技術をもとに新たな市場を創造するタイプです。任天堂がゲーム技術を健康・リハビリ分野へ転用した「Wii」が良い例です。そして、全く異なる技術と市場へ進出するタイプです。音楽レーベルから宇宙事業へと進出したヴァージン・グループのようなケースです。私がこれまで向き合ってきたのは、こうした多様な新規事業をいかにして組織の中で立ち上げ、形にしていくかという挑戦でした。
既存事業の最適化が生む「逆風」
大企業における新規事業の推進は、まさに「逆風」との戦いです。なぜなら、企業の管理運営システムは、本業の利益を最大化するために、すべてのリソースが最適化されているからです。決裁ルート、管理手法、組織、人員構成、教育制度に至るまで、既存事業を効率よく回すために作られています。
そこに新規事業を持ち込むということは、組織にとって「イレギュラー」でしかありません。本来、効率を追求する仕組みの中で、不確実な新しいことをやろうとすれば、あらゆる面で摩擦が生じるのは当然のことなのです。
自前主義(NIH)という障壁
さらに大きな壁となるのが、技術部門に根強く残る「自前主義(NIH:Not Invented Here)」です。
「自分たちの手で作らなければ意味がない」という自社技術への行き過ぎたこだわりが、時にユーザーの視点を曇らせます。他社がすでに確立している技術があるにもかかわらず、あえて自社で一から開発しようとするのです。特許回避のためであれば理解できますが、それが単なるこだわりの場合、開発スピードを落とし、事業の機会損失を招くだけです。
一方で事業部門は、日々の売上やシェア、新商品投入に忙殺されており、新規事業に割くリソースなどほとんどありません。こうした「組織の最適化」と「自前主義」が二重の壁となり、多くのアイデアが「死の谷」へと消えていきます。これが大企業における新規事業の厳しい現実なのです。
パナソニックの多角的な創出活動
パナソニックでの私の経験を振り返ると、新規事業への取り組みは非常に多角的でした。
大きく分けて、社員提案による「0-1」創出、企業同士のコラボレーション、スタートアップとの共創、スピンの推進、そしてベンチャー投資という5つの柱がありました。
草の根活動を支える0-1支援
特に重要だと感じたのは、新規事業の種を育む「草の根」の支援プログラムです。
例えば「大島塾」です。これはデジタル放送などの標準規格で数多くの特許を生み出した大島技監が主催していた活動です。業務外の時間に有志が集まり、自由なアイデアを特許や事業へと昇華させる場でした。ここからは、会社を辞めて自ら起業し、事業を大きく伸ばしたメンバーも出ています。
・・・(続く)
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