有識者セミナーレポート

成長戦略を実現する 合意形成の実践知
富士フイルム第二の創業を支えた中村氏が語る、
部門長が今押さえるべき視点

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企業が持続的に成長していくためには、「成長戦略」とその要となる「新規事業の創出」が欠かせません。その実現には、社内外の多様な人々や組織との「共創」が必須であり、その第一歩となるのが、異なる立場の人々との「合意形成」です。本レポートでは、富士フイルムにおいて「第二の創業」とも呼ばれる事業転換期に、化粧品事業の立ち上げや数々の新規事業創出をリードしてきた中村善貞氏が登壇。なぜ組織内での合意形成は難しいのか、その本質的な原因を紐解きながら、新規事業を推進するための実践的なアプローチや、承認者を攻略するための具体的な戦術について語っていただきました。

登壇者プロフィール

中村 善貞
一般社団法人イノベーションアーキテクト
代表理事


富士フイルムにて様々な新規技術・商品・事業の開発に携わった後、研究担当部長および商品部長として同社化粧品事業の立ち上げに貢献した。その後 R&D 統括本部 技術戦略部 統括マネジャー、同先端コア技術研究所 副所長、イノベーションアーキテクト(特命)として社内外の新規創出に携わる。現在、一般社団法人イノベーションアーキテクト代表理事。

合意形成が困難な背景

皆様も、社内外で「なかなか合意形成ができなくて困っている」という経験をお持ちではないでしょうか。実際に企業の中を見渡してみると、「合意不形成」は至る所で起きています。

例えば、部門横断プロジェクトでは、各部門が持つ KPI や評価軸が異なるため、「全社最適」よりも「部門最適」が優先され、主体的な取り組みが進まないことがあります。リスクを負う実施部門と、メリットを得る企画部門が分かれていることで、実行が停滞することもあるでしょう。

また、本社と現地法人や生産部門などの現場との間では、実情を踏まえた判断を求める現場側に対し、本社側は戦略やリスク管理を優先するため、調整がつかないといった摩擦が生じがちです。研究開発と営業の間でも、技術者は「できること(シーズ)」を起点に発想し、営業は「売れるもの」を求めるため、価値認識にズレが生じます。双方の言語(技術言語と市場言語)が異なり、翻訳者がいないことで対立が深まるのです。

この問題を考えるうえで非常に参考になるのが、宇田川 元一先生の著書『他者と働く』です。この本では、分かりあえなさ(合意不形成)の背景として、それぞれの人が持つ「ナラティブ(文脈)」の違いを指摘しています。ナラティブとは単なる物語ではなく、その人が世界をどう理解し、行動するかを規定する枠組みであり、個人の文脈でもあれば組織の文化でもあります。

それぞれのナラティブは、その人や組織が生き延びるための合理性を持っています。だからこそ、異なるナラティブが出会うと摩擦が生まれるのです。合意形成とは、相手の正しさを否定して自分の正しさを強制することではありません。相手の正しさを理解し、共通の正しさを新たに構築していくプロセスこそが、真の合意形成なのです。


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