有識者セミナーレポート

NTTドコモ・ベンチャーズ CCO が語る
大企業における オープンイノベーション実装とカルチャーづくりのリアル

大企業におけるオープンイノベーションの実装、そしてそれを支える組織文化(カルチャー)をいかに構築するか。本レポートでは、NTTドコモで iモードの立ち上げから新規事業創出プログラム「39works」の運営、そして現在は CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)である株式会社 NTTドコモ・ベンチャーズの代表取締役 CEO兼 CCO(チーフ・カルチャー・オフィサー)を務める 笹原 優子 氏の講演を記録しました。

自身の原体験である「iモード」時代の多様な組織像から、失敗を資産に変える仕組み、そして「ワクワク」を基点としたカルチャーづくりの極意まで、大企業におけるイノベーション実装の「リアル」をお届けします。

登壇者プロフィール
笹原 優子
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ
代表取締役 CEO & CCO

1995年NTTドコモに入社。iモードサービスおよび対応端末の企画、仕様策定にサービス立ち上げ時より携わる。その後携帯電話のラインナップおよび UI/デザイン戦略を担当。2014年より新事業創出プログラムを運営、社内起業家の支援を行う。2021年6月よりNTTドコモ・ベンチャーズ代表として事業共創とスタートアップ投資を実行。2023年6月よりNTTドコモ ライフスタイルイノベーション部長としてセキュリティ、モビリティ、スマートライフビジネスにおける事業創出を行う。
株式会社ローンディールのメンターやリープ共創基金プロボノなど社外活動にも参画。2025年7月より同社に戻り、代表取締役 CEO & CCO に就任。2013年 MIT Sloan Fellows で MBA 取得。大阪大学招聘教員。

自己紹介とミッション

本日は「オープンイノベーションの実装とカルチャーづくりのリアル」というテーマでお話しさせていただきます。リアルを追求しようとしたところ、少し小ネタ感が出てしまいましたが、私のこれまでのエピソードが皆さまの何かしらの参考になれば幸いです。

私のキャリアをまとめると、1995年に NTTドコモ に入社してから、まずは「iモード」という一つの大きな新規事業に担当として参画しました。その後、2014年からは社内起業家が新規事業を創出するためのプログラム「39works(サンキューワークス)」の立ち上げに関わり、7年ほどその運営に携わりました。そして一度、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズの代表を務めた後、ドコモの事業部で部長を経験し、2025年7月に再び株式会社 NTTドコモ・ベンチャーズの代表取締役 CEO、そして新たに CCO(チーフ・カルチャー・オフィサー)として戻ってまいりました。

私の個人的なミッションは「自分らしく活躍する人を増やしたい」ということです。自分を大切にしながら、イキイキと活躍できる人を増やしたい。そのために、イノベーションを仕組み化し、それを生み出すカルチャーを追求していくことが、私の仕事の軸になっています。

行動指針として大切にしているのは「オープン・フラット・ダイバーシティ」、そして「ワクワクし、ワクワクさせる」といったマインドです。また、少しユニークな指針かもしれませんが、「出るこんにゃく」というものも掲げています。これについては後ほど詳しくお話しします。

私たちが運営する株式会社NTTドコモ・ベンチャーズのミッションは「力と思いを束ね、世界の景色を変える」です。スタートアップの皆さんの構想実行力と、NTTグループの社会実装力を束ねることで、新しいインパクトを起こしていきたいと考えています。

「世界の景色を変える」という言葉には、「iモード」時代の原体験が込められています。iモードが始まる前、電車の景色は新聞や本を読んでいる人が中心でした。しかし、iモードが始まってからは、皆が携帯電話を開く景色に変わりました。景色が変わるということは、文化(カルチャー)が変わることです。スタートアップの皆さんと、単に出資して終わりではなく、文化が変わるその瞬間までご一緒したい。そんな思いで活動しています。

現在は NTT持株とドコモグループ、二つのファンドを運用しており、連結子会社約1000社を持つ NTTグループ全体をスタートアップとつなげる存在でありたいと考えています。



iモード:文化の原点

私のイノベーションカルチャーの原点は、1998年に異動した iモード開発プロジェクトにあります。
振り返れば、半年で100万契約という爆発的な普及を見せたサービスでしたが、立ち上げ当初の部署名は「ゲートウェイビジネス部」といい、社内では「何をやっているか分からない部署」と呼ばれていました。当時の NTTドコモでは非常に珍しかったのですが、リクルートなど社外からスカウトされた人材が多く、しかも上位ポジションで活躍されていました。非常に異端視されていた部署でしたが、この多様性こそがイノベーションの鍵だったと、今では確信しています。

その部署のルールは、当時の大企業の常識からはかけ離れたものでした。

  • 肩書きで呼ぶことは NG。
  • スーツでなくても OK。
  • 部長自らがコーヒーメーカーに水を入れる(「自分が一番早く来るから」という理由で)。

さらに徹底していたのが会議の文化です。上の人だけが話すのではなく、若手も一人ひとりが発言しなければなりませんでした。時には「発言しないなら会議室から出ていけ」と言われるほど厳格でしたが、それは「あなたの意見を聞きたい」という期待の裏返しでもありました。突拍子もない意見を出すと、周囲がそれを喜んでくれる。年齢や性別、バックグラウンドが異なる人の話こそ面白がって聞く。そんなオープンでフラットな土壌があったからこそ、数々のアイデアが生まれたのです。

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