有識者セミナーレポート

日東電工の「技術アセット活用事例」に学ぶ
大企業×新規事業 競争優位の創り方
〜経営・事業・知財が一体となった「ニッチトップ戦略」とは〜

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製品ライフサイクルが短く、次々に新しい技術と企業が登場する現代で新規事業を成功させるためには、自社技術の強みを発揮できる領域を早期に見つけ出し、スピーディな実用化・事業化に繋げることが必要です。その中で昨今注目されているのが、経営・事業判断における知財情報活用(IPランドスケープ)です。

自社や他社の知的財産や市場環境を統合的に分析し、得られた情報を事業開発に役立てることで、どの領域で参入障壁を構築するべきかを早期に特定することができ、持続的に事業を成長させる基盤を整えることができます。しかし実際には、知財や特許の領域に関してはあまり精通しておらず、それらに関する知見をどのように事業開発に活用できるのか見当が付いていない新規事業担当者が多いのではないでしょうか。

そこで今回は日東電工株式会社 技術知財戦略本部副本部長の濱﨑 豊弘氏をお迎えし、経営・事業・知財が一体となったイノベーション創出の取り組みの概要やそれらを実践した具体的な事例についてお話いただいた様子をレポートします。

登壇者プロフィール

濱﨑 豊弘
日東電工株式会社
技術知財戦略本部 副本部長(知財担当)

1994年に博士(工学)後期課程を修了後、大学助手、米国材料メーカ勤務を経て1999年に帰国し、特許事務所に勤務。その後、2003年に日東電工株式会社知的財産部に入社。2013年に知的財産戦略企画室長、2018年から現職。日東電工では、一貫して知的財産業務を行い、既存事業、新規事業、研究開発テーマと広く全般にわたる知財業務に携わってきた。

⼤企業×新規事業 技術アセットを活⽤した競争優位の創り⽅
Nittoの価値創造プロセス

今回は、経営・事業・知財が一体となった「ニッチトップ戦略」と題して、日東電工(以下、Nitto)の「技術アセット活用」の事例についてお話していければと思います。

まず、こちらの図はNittoの価値創造プロセスを表にしたものです。我々はお客様の対象を人類、環境まで広げて考えるようにしています。その上で社内で人類貢献、環境貢献として独自で社内規定をもうけて、今後は規定に見合う製品・サービスのみを開発し提供していきます。

Nittoの多くの製品を生み出す価値創造プロセスをまとめたものです。我々はお客様を人類、環境まで広げて考えるようにしています。その上で社内で人類貢献(HumanFlags™)、環境貢献(PlanetFlags™)という独自の規定を策定しました。今後開発していく製品・サービスはすべてこの条件を満たすことを目標としています。

製品・サービスの開発には、Nittoの成長エンジンである「三新活動」「ニッチトップ戦略」が根幹にあります。技・製・管・販が一体となって各事業分野に応じた活動を続けており、そこで生み出された経済、社会価値を次の価値創造に活用するプロセスを回していくことで、Nittoは成長を続けることができています。

それらを踏まえた上で、Nittoの中で重要な技術分野として掲げているのが「パワー&モビリティ」「デジタルインターフェース」「ヒューマンライフ」の3分野です。これらの重点分野においても地球環境、人類社会、産業にとって“なくてはならないか”という観点からスタートし、ニッチトップ戦略と三新活動を通じて製品化、事業化を進めることで、“なくてはならない”ニッチトップソリューションを生み出していきます。

Nittoの成長エンジンである「三新活動」

ここから具体的に戦略や活動の方向性について話していきたいと思います。まず始めにNittoの成長エンジンである三新活動について紹介します。

三新活動とは現行事業から新たな用途を開拓する、新製品を開発することによって、新たな需要を創造し、現行事業を拡張していく活動になります。

Nittoは三新活動によって「新製品比率35%以上」という目標を設定し、継続的に成長を続けてきました。実際に先輩方に話を聞いたところ、三新活動は1955年頃から活動がスタートしているそうです。新製品比率は発売から3年以内の製品の全売上高に占める比率です。この比率を維持していくことで、3年で全製品が入れ替わるということになります。

例えば、電気絶縁⽤ビニルテープから始まり、時代の変化とともにステンレス表⾯保護フィルム、半導体ダイシング⽤テープ、光学部材表⾯保護フィルムといったように、しっかり付き、キレイに剥がせる粘着技術で様々な⽤途を開拓、事業を拡⼤してきました。

Nittoの成⻑を⽀える「Global Niche Top™」

次にNitto流のニッチトップ戦略について説明します。我々が掲げる「Global Niche Top™」は1990年代半ばにNittoが打ち出し、2002年に⽇本で初めて商標登録されたNittoの成⻑を⽀える経営戦略です。

具体的には変化しながら成⻑するマーケットを⾒極め、その中のニッチな領域を対象に、Nittoグループ固有の技術・知⾒の融合と、ステークホルダーとの共創により、なくてはならない “製品” “機能” “ビジネスモデル” を継続的に⽣み出し、シェアNo.1を狙う、Nitto独⾃の差別化戦略です。

ニッチは一般的に「隙間」「狭⼩」と捉えられていますが、生物学的には居心地がいいという意味もあります。我々が狙うニッチな領域は、後者の居心地がいいという風に考えています。我々の得意とする技術、強みを発揮しやすい領域であり、お客様にとってなくてはならない領域で、他社にとっては参入しづらい領域ということになります。

ニッチトップとは我々の力を発揮しやすいエリアにおいて、グローバルでシェアトップをとる。それにより、お客様からはなくてはならない存在になり、お客様と一緒に成長していくということを実現していきます。ディスプレイ⽤偏光フィルム(NPF™)、熱はく離シート (リバアルファ™)、精密回路付き薄膜⾦属ベース基板(CISFLEX™)は「Global Niche Top™」によって生まれた代表的な3つの商品になります。

・・・(続く)

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