有識者セミナーレポート

「医療4.0」を創る ヘルスケアビジネス新戦略 
~2030年に向けた展望と事業の生み出し方~

近年、日本の医療は本質的な変革を迫られています。人口減少・高齢化を背景として、1.医療提供体制の地域間格差 2.医療者の労働環境 3.医療費高騰という大きな3つの課題を抱え、現行のままでは体制を維持できず、衰退の恐れもあります。
そこで、解決手段として注目されているのが、「第4次産業革命」のテクノロジー(AI・ビッグデータ・ロボティクス等)の活用、即ち「医療4.0」です。今回は、「医療4.0 実践編 これからのヘルステック戦略」著者で、デジタルハリウッド大学大学院特任教授・東京医科歯科大学臨床教授の加藤浩晃氏をお迎えし、2030年、2040年に向けた医療の展望などについてお話いただいた様子をレポートいたします。

登壇者プロフィール

加藤 浩晃氏
医師、デジタルハリウッド大学大学院 特任教授
東京医科歯科大学 臨床教授
アイリス株式会社 共同創業者・取締役副社長CSO

遠隔医療、AI、IoTなどデジタルヘルスの政策提言にも携わる、元厚生労働省官僚・現役医師・MBA。オンライン診療や治療用アプリなど数多くの事業開発に関わりながら、AI医療機器開発を手掛けるアイリスを共同創業し、取締役副社長CSO。厚生労働省医療系ベンチャー・トータルサポートオフィス(MEDISO)サポーター、経済産業省Healthcare Innovation Hubアドバイザー、上場企業の社外取締役などを兼任。「医療現場」「医療制度」「ビジネス」 の3領域に横断的に関わる知見を生かし、ヘルステック領域の事業開発や支援を行う。2022年4月、次世代医療の共創の場としてTHIRD CLINICを開院。

「医療4.0」とは何か

いまは医療が大きく変化するタイミングに突入した、と考えています。

モバイル、AI、ロボット、ウェアラブル、IoTを中心とした第四次産業革命に加えて、新型コロナの流行による社会の変化。医師の働き方改革も含めた医療環境の変化などによって「医療4.0」とも言える時代になりました。「医療4.0」とは何か。

「医療1.0」は国民皆保険制度や医療提供によって医療体制の礎ができた1960年代のこと、「医療2.0」は老人保健法制定、ゴールドプランによって介護政策が進んだ1980年代、「医療3.0」はインターネットの普及、電子カルテの導入によって医療のICT化が進んだ2000年代のこと。そして「医療4.0」はデジタルテクノロジーによって医療が大変革(DX)していきます。2030年に向けて医療は「多角化」「個別化」「主体化」が進んでいく。

「多角化」「個別化」「主体化」について、それぞれ説明していきます。

①医療の多角化

医療の多角化とは、医療のタッチポイントが増えているということです。昔は病気になってから初めて病院に行き、そこで医療を受けていました。それが今は予防や健康診断が進んでいるほか、予後として疾患管理やリハビリテーション、そして病院へ行かずとも在宅診療やオンライン診療など、さまざまなタッチポイントで医療と触れ合う機会があります。会社に例えるならば、病院にいて医療を提供する事業から、予防事業やリハビリ事業、オンライン診療事業といったように事業の多角化をしているということです。そして、そうしたタッチポイントが日常にまで広がっており、医療の接点はどんどん広がっています。

②医療の個別化

医療の個別化に関しては、医療のビッグデータに対する捉え方が変わったということです。今まではそれぞれの病院に溜まっているデータを集めることをビッグデータと呼んでいました。言ってしまえば、病院間のデータを集めるようなものだったのです。

IoTデバイスやウェアラブルデバイスなどが普及したことにより、いち個体に関する膨大なデータ、多様な個別パターンを集めることができるようになりました。

③医療の主体化

医療の主体化は患者さんが主体的となって医療に関われるということです。スマホなどから健康情報や病院の診察記録を参照できる仕組み「PHR(Personal Health Record)」というものができ、健康データを見れるようになったことで患者さんの健康意識が向上したほか、主体的に医療に参加するようになりました。医療従事者や医療系企業、行政が主体だった医療化ら、患者さん中心の医療へと変わってきているのです。

これは個人的な妄想になりますが、こうした変化によって2030年ごろの医療はオンラインファースト(多角化)が当たり前となるほか、個人に最適化(個別化)し、自分の医療情報を持つ(主体化)ようになる。多分、本当に必要な人だけが対面診療する時代になっていくと思います。

少し視点を変えて、医療を見ていきます。経営学では製品の売上と利益の変遷を4つの段階で説明する「プロダクト ・ライフサイクル」というものがあります。このモデルは日本の医療にも当てはまると思っています。つまり、「医療1.0」が導入期、「医療2.0」が成長期、「医療3.0」が成熟期、「医療4.0」が衰退期と言うことができると考えているのです。・・・(続く)

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