有識者セミナーレポート
新規事業アイデアを生み出す イノベーションの起こし方
新規事業を成功させるためには、イノベーティブな発想で良質なアイデアを生み出すことが必要です。しかし、「イノベーションを起こそう」という号令をかけつつ、実際にはオフィスの席に戻るとオペレーション、というケースも少なくないのではないでしょうか。
言葉の浸透度とは裏腹に、概念的でとらえにくい「イノベーション」。企業では、具体的にどのように考え、実践すれば良いのでしょうか?
そこで今回は『たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか』著者であり、京都大学経営管理大学院 客員教授の竹林 一氏をお迎えし、良質な新規事業アイデアを生み出し、企業においてイノベーションを実現するための「考え方のヒント」についてお話いただいた様子をレポートします。
登壇者プロフィール
竹林 一氏
京都大学経営管理大学院 客員教授
オムロン株式会社 イノベーション推進本部 シニアアドバイザー“機械に出来ることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである”との理念に感動して立石電機(現オムロン)に入社。以後新規事業開発、オムロンソフトウェア代表取締役社長、インキュベーションセンタ長等を経て現職。 また京都大学経営管理大学院客員教授として「100年続くベンチャーが生まれ育つ都」に向けた研究を推進する。 最新著書に「たった一人からはじめるイノベーション入門」がある。
イノベーションとは「新結合」である
今回は「イノベーションの起こし方」の入門編ということで、基本的な考え方についてお話ししていければと思っております。そもそも、イノベーションとは何なのでしょうか。
イノベーションの原点と言われているのが、オーストリア出身の経済学者であるヨゼフ・シュンペーターが1911年に提唱した概念です。彼はイノベーションについて、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義しました。そして、イノベーションには5つのタイプがあると言っています。
1つ目が、新しい財貨すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨を生産すること。いわゆるプロダクション・イノベーション。世間一般がイメージする新商品の開発、新規事業の立ち上げです。
2つ目に新しい生産方法を導入する(プロセス・イノベーション)と言われるものがあります。そのほかに、新しい販路を開拓する(マーケット・イノベーション)、原料あるいは半製品の新しい供給源を獲得する(サプライチェーン・イノベーション)、新しい組織を実現する(オルガニゼーション・イノベーション)があります。こうして見るとイノベーションとは新規事業の立ち上げだけに限った話ではないことがわかります。総務や人事など、誰でもイノベーションを起こすことができるのです。
では、イノベーションを起こす上で何がポイントなのか。シュンペーターが「新結合」と言っているように、いろんなものを結合してみることが大事です。自分ひとりで考えていてもイノベーションは起こせないので、いろんなものを結合してみる。例えば、業界・業種が違ってもいいので、他社で成功しているアイデアを参考にしながら、自社の製品・サービスと掛け算してみたら面白いことが起きるかもしれません。
「そのまま自分の会社に持っていってもいいのかな?」と思うものでも、一度抽象化してみて、使えるところはどこかを考えてみる。何らかのヒントがあると思うので抽象化して、会社の中で結合させると何が起きるのかを考えてみましょう。答えは現場にあるのですが、ヒントは外にある。外からヒントをとってきましょうという話です。
イノベーションで重要なのは「共通言語」
ここから、『たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか』をもとに、いくつかヒントをお話したいと思います。
イノベーションを起こす上で何より大事だと思っているのが「共通言語で話す」ことです。イノベーションについて、ある人は「すごいことを起こすことだ」と言い、ある人は「ゼロからイチを起こすことだ」と言う。一方で、シュンペーターは「掛け算してみること」と言っています。人によって、イノベーションの定義が異なるんです。だからこそ、社内で共通言語を定め、その共通言語で話すことが大事になります。
例えば、私が所属していたオムロンではイノベーションを定義しています。オムロンが定義するイノベーションとは、ソーシャルニーズの創造。「社会の課題を技術で解決することにより、より良い社会を実現する」こととしています。
では、イノベーションが起こせたかどうか。どのように判断すればいいのでしょうか。オムロンでは社会の課題を考える上での海図を持っています。・・・(続く)
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