有識者セミナーレポート

事業開発の意思決定を”間違わない”ためのユーザーインタビューの教科書

事業開発プロセスにおいて、意思決定をスムーズに行うために有用な手段の一つが「ユーザーインタビュー」です。しかし、いざユーザーインタビューを実施する際に、さまざまなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は「ユーザーインタビューのやさしい教科書」共著者である、山崎 真湖人氏と伊藤英明氏をお迎えし、2部構成で、「事業開発の各フェーズで意思決定を”間違わない”ための、顧客の声の分析・活用方法」について、実際の事例を交えてお話いただいた様子をレポートします。

登壇者プロフィール

山崎 真湖人氏
フリーランス デザインリサーチャー
慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教

株式会社リコー、アドビシステムズ株式会社、株式会社ziba tokyo、株式会社NTT DATAで研究開発、人間中心設計推進、ユーザーリサーチ、サービスデザイン等の業務を経験。観察やインタビューなどの調査やアイデア発想を含む新価値創造のプロジェクトにおいて、システムズエンジニアリング、認知科学、UXデザイン、サービスデザイン、デザインリサーチ等多様な思考方法の融合を武器に、柔軟かつ創造的に課題解決をサポートする。


伊藤 英明氏
株式会社ヴァル研究所 MaaS事業部 UXデザイナー
NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)評議委員

UXD、HCDのスペシャリストとして開発現場での実践、大学教育での啓蒙に従事。認定スクラムプロダクトオーナー、スクラムマスターとしての面もあり、開発の現場においてユーザー調査からの要件定義、仕様策定までを活動領域としている。 NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)評議委員、東京造形大学デザイン学科メディアデザイン専攻領域 非常勤講師。

3つのタイプのインタビュー

インタビュー調査に関して、「ユーザーインタビューのやさしい教科書」では大きく3つのタイプにわけて考えています。それが「機会探索」「タスク分析」「仮説検証」の3つです。

この図は一般的な製品・サービスの開発の流れを書いたものです。機会探索はコンセプトのもととなる機会領域を見つけるためのインタビュー、タスク分析はサポート対象となる活動についてより詳細な情報を得るためのインタビュー、仮説検証はチームの仮説の適切さを確認し修正や改善のヒントを得るためのインタビューと理解しておくと分りやすいでしょう。それぞれ、インタビューの目的が異なり、実施する内容も異なります。

機会探索型

まず機会探索型について説明します。これは製品・サービス開発におけるファーストステップです。顧客が抱えているであろう深い課題 「CPF (Customer Problem Fit)」を特定すべく、注⽬すべき課題を探索するためにインタビューを実施します。

具体的には「どんな人が、どんなシーンで、どんな課題を抱えているのか」を特定できると理想的です。ただ、「課題」という言葉には注意が必要です。不可能、不⾜、不満、不便といったネガティブな意味での課題もありますが、「もっと」「本当は〜〜したい」という期待をする意味での課題もあります。マイナスをゼロにしたいだけではなく、もっとプラスが欲しいという期待も含めて、ここでは課題と呼んでいます。

そして、誰の課題に注目するかも大事です。課題は多様な人とのコミュニケーション、連携して活動する中で生まれるもの。何が課題かを見極めるためには、ある程度幅広い対象者に話を聞く必要があります。例えば、「お店をやっている人の課題を解決したい」と言ってもお店の種類はさまざまです。路面店もあれば、建物内のお店もあります。また、お店の規模やビジネスの内容によって課題は異なってきます。

どういった人にフォーカスするかが決まっていない段階であれば、ある程度幅広い対象者に参加いただき、話を聞くのが効果的です。

また、掴みたいのは課題ですが、課題が生じる背景を知ることも大切です。インタビューでいきなり「課題って何ですか?」と聞いても普通は答えられません。例えば、お店で買い物することを想定すると、「最近スーパーで買い物したのはいつですか」「何を買いましたか」「買い物をするときにどうやって商品を選びましたか」と具体的にその人の購買活動を知ることで、少しずつ置かれた状況がわかってきます。そうすると、相手も何を課題に感じているのか思い出しやすくなりますし、我々も理解がしやすくなります。

機会探索型のインタビューにおいては、基本的には“状況”に注⽬します。モノやサービスを提供する⽬的は、新しい状況を⽣み出すこと。“価値” を提供するには、それが体験として実感できる “状況” を提供する必要があります。

そのためには、現在どのような状況(社会・⽂化的、⾝体・物理的、認知・感情的)になっているのか、どんな状況を相⼿にしている⼈なのかをとらえることで、抱えている課題がわかってきます。よく「真の課題」という言葉が使われますが、質問してダイレクトに答えが返ってくるわけがありません。まずは状況をよく理解する。その中で課題がよくわかってくるという流れが基本になります。

また、インタビューは情報を得るだけではありません。対話する中で、「もしかしたらこういうことを求めているかもしれない」というものが思いつくことがあります。そうやって掴んだことを仮説として開発チームに伝えると、インタビュー結果の解釈の方向性が伝わって、良い刺激になると思います。

タスク分析型

タスク分析型は、顧客要求を知るために、現状をより深く細かく理解するためのインタビューを行うものです。言い換えると「SPF(Solution Product Fit)」を実現させるために、製品・サービスの詳細、価格、提供⽅法などを検討していくための調査です。この調査によってターゲット顧客、スコープに含める活動内容(サポート範囲)も見えてくるので、「仕様としてどこまでの範囲をサポートすれば相手の役に立つか」がわかってきます。

では、何をすればいいのか。まずは実際の活動と、それを⽀える仕組み(ツールやサービスなど)を詳しく知っていきます。買い物であれば、「買い物する際の手順を詳しく教えてください」ということを聞いていく。お店を複数使い分けるなら、どう使い分けているのか。買い物の際にどういう道具を使うのか。エコバッグを持っていくのか、持っていくならどういう持っていき方をするのか、どこで取り出すのかというように細かく話を聞いていきます。
・・・(続く)

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