有識者セミナーレポート

富士フイルムの化粧品領域参入に学ぶ 大企業×新規事業 自社アセット起点の事業創出〜「畑違い」でもビジネス化できるアイデアの見極め方とは〜

経済状況や社会情勢、消費者の価値観が急激に変化する時代において、事業のライフサイクルは短くなっています。これまで成⻑を牽引してきた事業であっても、いつかは衰退を余儀なくされます。そうした環境変化に対応するには、⾃社アセットを活⽤して新たな事業を⽴ち上げる術を知っておくことが必要です。

特に、⾃社アセット起点の事業創出を成功させるには、単に規模や成⻑性が⼤きい市場を⾒つけるだけでなく、⾃社アセットを活かせる領域を正しく⾒定めた上で、両者の交点を踏まえて、採択すべきアイデアを戦略的に⾒極めることが重要です。

そこで今回は元‧富⼠フイルムで、現‧⼀般社団法⼈イノベーションアーキテクト代表理事の中村 善貞⽒をお招きし、富⼠フイルムにとって畑違いだった化粧品領域にて、⾃社のアセットをどう活⽤し、その過程でどのようにアイデアを⾒極めたのか。その具体的なプロセスや成功要諦についてお話いただいた模様をレポートします。

登壇者プロフィール

中村 善貞 ⽒

⼀般社団法⼈イノベーションアーキテクト
代表理事

富⼠フイルムにて様々な新規技術‧商品‧事業の開発に携わった後、研究担当部⻑および商品部⻑として同社化粧品事業の⽴ち上げに貢献した。その後 R&D統括本部 技術戦略部 統括マネジャー、同 先端コア技術研究所 副所⻑、イノベーションアーキテクト(特命)として社内外の新規創出に携わる。現在、⼀般社団法⼈イノベーションアーキテクト代表理事

主⼒事業が無くなる中での、新規事業創出

富⼠フイルムの写真フィルム事業は全盛期に⼤きく事業を伸ばしましたが、2000年前後から雲⾏きが怪しくなり、2000年を過ぎた頃から急激に市場がシュリンクしていきました。最⼤で年率20%超の市場消失ということで、みるみる市場がなくなっていきました。その背景にあるのが急速なデジタル化の進展です。デジタルカメラを中⼼とした写真の世界になり、写真フィルムは使わなくていいという価値観になっていきました。

こうした価値観の変化にあわせて、富⼠フイルムでは写真フィルム市場に代わるような新たな事業を作っていかなければなりません。富⼠フイルムの新規事業創出に関しては、以下のマトリクス図を使って説明されています。この図は縦軸が技術、横軸が市場になっています。左下が本業である写真フィルムを中⼼とした事業です。これが無くなる中で上に⾏ったり、右に⾏ったりした中で、右上の新しい領域にチャレンジしました。

この図で⾔うと、上にいく⻘い⽮印は新しい技術を獲得して既存の市場を守っていこうということなので、富⼠フイルムにおいては写真市場を守っていくことが必要だったわけです。⼀⾔で⾔うならば新技術の獲得による市場の確保ということになります。

⻩⾊い⽮印は既存技術を使って新しい市場に展開していくということなので、技術の展開による新市場の開拓ということになります。右上は新しい技術を獲得しながら、新しい市場をつくっていくということなので、新しい領域へのチャレンジと⾔えます。今⽇の話は化粧品事業ですので、右に⾏きながら上に⾏くことについての話になります。ただ、その前に他の⽮印についても少しだけ話をさせてください。

上に向かう⽮印は既存の市場において、既存の技術ではやっていけなくなったときに、新しい技術によって市場に展開していくという話になります。富⼠フイルムにおいては、写真フィルム技術を使わず、新しい技術で写真市場をつくっていくことになります。

具体的には、デジタル技術の獲得によるデジタルカメラの導⼊です。富⼠フイルムにおいては、CCD撮像素⼦を開発‧製造し、それを⽤いたデジタルカメラの開発‧製造、販売を⾏っていました。写真フィルムという本業の技術を否定するような新しい技術を獲得しなければならなかったということなので、⾃分たちにとっての破壊的な技術の獲得が必要だったということになります。⾔い換えるならば、新しいコア技術の獲得と⾔っていいかもしれません。



・・・(続く)

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