有識者セミナーレポート

日立製作所フェローが語る
データを “事業” に変える 15年の挑戦〜研究データを活かした事業化のリアル〜

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日立製作所で42年にわたり研究開発に従事し、特に直近20年以上は「データ」の事業化に挑み続けてきた矢野和男氏。本講演では、半導体事業の撤退というキャリアの転機から、「人の幸せ」をデータで科学するという新たな領域に踏み出し、1,000万日を超える膨大な行動データを解析して見出した「ファクターX」について解説します。個人の成長を促す「右回りの法則」や、組織の生産性を左右する「V字と三角形」の人間関係の構造を解き明かします。さらに、これからのAI時代において、人の生産性と幸せを両立する鍵は「創造性」であると説き、その創造性をブーストするための第4世代AI「創造AI FIRA」の開発に至る軌跡を紹介します。

登壇者プロフィール

矢野 和男
会社日立製作所 フェロー 株式会社
ハピネスプラネット 代表取締役 CEO

1984年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、日立製作所入社。2004年からビッグデータ収集・活用で世界を牽引。特に、幅広い分野で実活用されている多目的AIの開発やデータを活用したハピネスの解明で先導的な役割を果たす。2020年ハピネスプラネット設立。
2020年 IEEE Frederik Phillips Awardを受賞。著書に『データの見えざる手』、『予測不能の時代』、2025年7月上梓 『トリニティ組織:人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」』。博士(工学)。IEEE Fellow。

データを“事業”に変える挑戦

私は日立に入社して、もう42年になります。42年前に東京の国分寺にある中央研究所に入り、当時は半導体が非常に元気な時代で、私も半導体分野の研究開発を担当しました。

ところが今から20数年前、日立で半導体事業をやめるという決定がなされました。20年培ってきた人脈やスキルを一度リセットして新しいことを始めなければならず、大変なピンチに陥り、「困ったな」と感じました。これから何をやろうかと、仲間と毎日議論していました。

実は、半導体時代の最後の経験が大きなきっかけになっています。当時、私たちは携帯電話の計算力を担う半導体チップを開発しており、非常に高いシェアを誇る製品を販売していました。しかし、私たちが心血を注いだ汗と涙の結晶が、スナック菓子のポテトチップスと同じような値段でしか買っていただけないという、大変残念な現実に直面しました。

やはり、このような大量生産品は、いくら高度な技術があっても価格競争になってしまい、高く評価してもらえないのではないか。仕事を変えるなら、違う切り口はないかと議論する中で、「コンピュータという箱は大事だが、むしろコンピュータから出てくるデータのほうが大事な時代が来るのではないか」という話になりました。

今から20数年前は、「データが大事だ」などと言う人は誰もいませんでした。データというのはコンピュータから出てくる副産物のようなもので、それ自体が価値を持つものだという認識はなかったのです。だからこそ、逆にそこに「逆張り」して賭けてみようと決意したのです。

幸せが経済価値を生む「21世紀の循環」

私たちはこれまで、システム1、すなわち「20世紀の循環」で考えてきました。一生懸命働いて利益を出し、国としてはGDPが上がり、その結果として世の中が豊かになって「幸せ」になる、という考え方です。

ところが、この30年ほどの経済学の研究では、先進国ではGDPや利益を増やしても「幸せ」があまり増えないという傾向が、データに明確に示されているのです。

そこで、もう一つの考え方があります。システム2、「21世紀の循環」です。働くという場を通して、人は自分の役割や居場所を見つけ、そこでさまざまな工夫や挑戦をします。それを通して自分なりの創造(クリエーション)が生まれ、これがやりがいや充実感といった「幸せ」につながります。そして、そこで行った工夫や挑戦が、新たな利益の源泉になっていくのです。

システム1は「利益を出していれば、幸せは結果としてついてくる」という考え方です。皆さんの会社で「幸せ」について会議の議題になったことは、あまりないのではないでしょうか。一方、システム2は「利益を出すためにも幸せが大事である」というロジックです。21世紀の知識社会の中では、このシステム2の重要性がますます高まっており、私たちは当初からそのような世界観を持っていました。

ちょうど私たちが模索を始めた20年前、人の「幸せ」という一見曖昧なテーマを、データで本格的に研究する分野が生まれ、爆発的に広がり始めた頃でした。


その発起人であるチクセント・ミハイ先生をはじめ、世界のトップ研究者たちに「私たちはデータも取得できるので、一緒に研究しませんか」とお声がけしたところ、「ぜひぜひ」ということで、共に論文を書いたり研究を進めたりしてきました。

私自身も、この左腕に加速度センサーを装着し、2009年から2020年までの12年間、24時間365日の身体運動をすべて1枚の図(データ)にまとめました。

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