有識者セミナーレポート
次世代自動車 最新技術動向
〜世界5社の開発戦略を特許 IP から読み解く、
各社の注力技術と領域から見る未来とは〜
自動車業界では、激しい競争が巻き起こっています。
このような状況で、自動車産業で求められるテクノロジーはどのように変化し、
次世代自動車の未来はどのようになるのでしょうか?
また、各社はどのような戦略を持って、各技術分野に注力しているのでしょうか?
そこで今回は「EV未来予測 世界5社の開発戦略」著者で、IP ランドスケープの
専門家であり、多数の特許情報を基にした業界分析を手掛ける、
株式会社知財ランドスケープ 代表取締役社長 CEO の山内明氏をお迎えし、
次世代自動車の最新技術動向についてお話いただいた模様をレポートします。
登壇者プロフィール
山内 明 氏
株式会社知財ランドスケープ代表取締役社長 CEO
弁理士 シニア知的財産アナリスト(AIPE認定)大学、大学院では機械制御工学を専攻し、大手メーカでの開発業務、大手特許事務所での特許出願権利化業務、商社系知財戦略ベンチャーやシンクタンクでの知財コンサルティングの業務に従事する。シンクタンク時代にIPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略を確立し、互教の精神で啓発活動と手法改良に努める。現在は、IPランドスケープ専業の(株)知財ランドスケープの代表を務めつつ、最新手法IPランドスケープ3.0実践によるビジネスコンサルティングに取り組んでいる。2019年にはJAPIO理事長賞(活用研究功労者)を受賞。2020年にはIAM Strategy 300、2021年以降、IAM Strategy 300 Global Leadersに毎年選出される。近著:「EV未来予測 世界5社の開発戦略」(2024年、日経BP社)
ソニー・ホンダモビリティ、BYD、TESLA の
技術動向から見る「将来予測」
最初にソニー・ホンダモビリティ、BYD、TESLA の3社分を1枚にまとめたエグゼクティブサマリーを
用いて、全体を俯瞰させて頂きます。
まず、ソニーグループとホンダの共同出資によるソニー・ホンダモビリティについては、
2023年5月の分析当時、同社開発中の EV「AFEELA」のウェブサイトを確認しても、
コンセプト的な内容に留まり将来的にどういった機能が搭載されるのかといった情報は全く見当たらず、
それならばと奮い立って、将来予測に挑むこととしました。
その結果、3点について将来予測できました。
1点目は、ソニーグループのセンサーフュージョン技術と、ホンダの自動駐車機能とのシナジーによる
高度な自動運転機能の実現等です。
2点目は、フロントウィンドウ全体をディスプレイとして迫力ある映像を楽しむ究極のエンタメカーの
実現です。
3点目は、そして最後が「EV ×自動駐車」と「ワイヤレス給電×V2G(ヴィークル・ツー・グリッド)」の
組合せによるスマートホーム/シティの実現です。
次に BYD ですが、同社開発の EV用プラットフォームである e-Platform3.0 がトヨタの中国戦略 EV(bx3)に採用されるなど、高い技術力とコスパが話題となっていました。
その実力を炙り出そうと意気込んで分析した結果、e-Platform3.0 の基幹技術として、
彼らの代名詞ともいえるブレードバッテリー関連の強みを炙り出すことができました。
しかも特許情報だけでなく意匠情報も絡めると、BYD の意外な側面や先駆性が見えてきました。
すなわち、意匠情報によれば、コンシェルジュサービスを想起させるアバター関連が散見され、
次期モデル以降、アイキャッチなコックピットに刷新されることが予測されたのです。
残る TESLA については、BYD の台頭と躍進により首位の座が脅かされていますが、
同社が引き続きリーダーで在り続けられるか否かという視点で分析しました。
その結果、「カメラ方式× AI」で進化を遂げる自動運転技術や、熱の司令塔「オクトバルブ」に代表される
「熱マネジメント」に強みがあり、更には UX 向上に役立つ独創的なモノづくり志向やデザインファースト志向も垣間見ることができ、次世代まで通用するリーダーの底力を視覚化することができました。
特許の出願データから各社の戦略を読み解く
こちらは全6社(5陣営)についての特許情報によるマクロ分析結果です。
2つのマップから構成されており、左が出願人ランキング、中央から右が「出願人×特許分類」の
マトリクスマップです。
ホンダと BYD は、過去の内燃機関絡みが多いため、電動化関連の特許分類で絞り込みましたが、
それでもハイブリッド関連で底上げされるホンダは突出して首位となります。
但し、BYD は 2020年以降も件数を堅持している一方で、ホンダは 2020年以降件数が鈍化しており、
BYD が追い付き追い越すのも時間の問題といえます。
これは自動運転市場における一時の過熱競争が和らぎ、先行している企業であるホンダは出願件数の伸びが鈍化し、後発参入した BYD の出願件数が堅調であることがわかります。
一方、EV 専業の TESLA は、以前から保有特許が少ないことは分かっていましたが、
改めて比較してみると、実にホンダの 2,284件に対して 230件と一桁少ないことが分かりました。
このように桁違いに件数差のある出願人間でそれぞれの特徴を炙り出すのは容易ではありませんが、
何とか炙り出した結果が、このマトリクスマップです。
・・・(続く)
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