有識者セミナーレポート
研究企画の成否を分ける「市場探索」と「長期テーマ意思決定」〜“組織の壁”を越え、経営を動かす実践的アプローチ〜
新規事業や研究開発において、「市場探索が進まない」「経営層からの承認が得られない」といった悩みを抱える担当者は少なくありません。本セミナーでは、タキロンシーアイ株式会社 研究開発企画統括部長の住吉大四郎氏が登壇しました。同社における「技術起点」での新事業創出のアプローチや、外部知見や生成AIを活用した市場探索の実践知、さらには経営層から長期テーマの承認を得るための「中間ゴール設定」という戦略的な工夫について、現場での悪戦苦闘のエピソードを交えながら具体的に語られました。
登壇者プロフィール
住吉 大四郎 ⽒
タキロンシーアイ株式会社
研究開発本部・研究開発企画統括部
部長
1991年4月凸版印刷株式会社入社。主に、包装材、新事業の領域で、販売促進、生産技術、営業、事業企画、開発、と販売系から技術系まで幅広い業務に従事するとともに、この間、九州、中四国、東京、関西、と様々なエリアで勤務。2023年4月タキロンシーアイ株式会社入社し、研究開発本部に配属。1年目は新事業企画担当部長、2年目以降は現在まで、研究開発企画統括部部長として、新事業企画、研究開発企画に携わる。
会社概要と登壇者紹介
総合樹脂加工メーカーの強み
皆様、こんにちは。タキロンシーアイの住吉です。本日は「研究企画の成否を分ける市場探索と長期テーマ意思決定」というテーマで、私が現場で実践しているアプローチについてお話しします。私自身も管理職として日々現場で悪戦苦闘している立場ですので、皆様と同じ視点に立ち、少しでも参考になるお話ができればと思います。
まず、私が所属するタキロンシーアイについて簡単にご紹介します。弊社は1919年創業で、現在の売上高は約1,400億円、営業利益は約80億円規模の会社です。一言で表現すると、「総合樹脂加工メーカー」です。
事業領域としては、高速道路の防音壁などを手がける「建築資材・シビル事業」、半導体製造装置に使用されるプラスチック板などの「高機能材事業」、農業用ビニールハウスなどを展開する「フィルム事業」などがあります。私たちの強みは、分厚い製品から薄いフィルムまで、多様な樹脂材料と成形技術を組み合わせて加工できる「樹脂成形加工技術」にあります。自らを「加工屋」と定義し、このコア技術を磨き続けています。
登壇者の経歴と役割
私自身は、もともと凸版印刷株式会社(現TOPPAN)に入社し、パッケージ事業や新事業に長らく従事してきました。販売促進から生産技術、営業、事業企画、開発まで、川上から川下まで幅広い業務を経験し、勤務地も全国各地を転々としてきました。その後、3年前にタキロンシーアイに入社し、現在は研究開発本部にて企画統括を担当しています。
研究開発の方向付け
事業視点と技術視点の両輪
研究開発や新事業創出を進めるにあたり、まず重要になるのが「方向づけ」です。私たちは「事業視点」と「技術視点」の両輪で方向性を策定しました。
まず事業視点では、現状の加工品・中間素材という領域にとどまらず、グループ会社の技術も活用しながら、より上流の「素材・原料」や、下流の「デバイス・モジュール」へと事業領域を拡大していく方針を立てました。現場のメンバーがばらばらな動きをしないよう、会社としてどこに向かうのかというベクトルを明確に示すことが、組織の力を発揮するためには不可欠です。
領域拡大と5つの注力分野
リソースは有限ですので、全方位に展開するわけにはいきません。そこで私たちは、将来の市場環境を見据え、成長が期待される以下の5つを「注力事業ドメイン」として設定しました。
- 包材・容器:世界的な人口増加に伴い、確実に市場拡大が見込まれる分野
- モビリティ:EV化を筆頭に大変革期を迎え、ゲームチェンジが起きている分野
- ヘルスケア・メディカル:高齢化社会において重要な課題となる分野
- 超微粒子マテリアル:半導体などを中心に活用領域が広がっている分野
- エレクトロニクス:通信技術の進化などが著しい分野
技術視点においては、上流・下流への取り組みを通じて、コア技術である樹脂加工技術に新たな付加価値(新機能の追加や生産性向上など)を付与し、技術を「進化・深化」させていくことを目指しています。
推進体制とリソース整備
方向性を定めた後は、それを受け止める「器」、つまりリソースの整備が必要です。組織面では、新部署の立ち上げや、私のような外部人材の招聘を進めています。ハード面では、2026年4月に兵庫県三田市に「新総合研究所」を開所する予定です。これまで分散していた研究開発機能を集約し、技術のハブセンターとして社内外の連携を強化していく計画です。
当社の研究開発本部は、主に3つの部隊で構成されています。一つ目は、試作や評価を担う「研究開発部」。二つ目は、特許戦略などを担う「知財部」。そして三つ目が、私が所属する「研究開発企画統括部」です。ここでは、テーマの企画創案やマーケティング、推進活動を担っており、いわゆる研究企画部門にあたります。
・・・(続く)
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