有識者セミナーレポート
三菱電機 上席執行役員 ビジネスイノベーション本部
松原氏が語る 未来を切り拓く新事業創出
〜イノベーティブカンパニーへの変革に向けて〜
三菱電機株式会社は、既存事業の枠を超えた新たな価値創出を目指し、2020年に「ビジネスイノベーション本部(BI本)」を設立しました。本講演では、同本部を率いる松原公実氏が登壇し、巨大組織の中でいかに新事業を生み出すのかについて、その具体的な「仕組み(ステージゲート法・フィットジャーニー)」や、数々の失敗から得た「学び」、さらに「MelBridge」や「農業脱炭素ソリューション」といった具体的な事業開発事例が語られました。また、CVCを通じたスタートアップとの連携や、社内風土改革への熱い想いも共有された、変革のリアルを伝える内容となっています。
登壇者プロフィール
松原 公実 ⽒
三菱電機株式会社
上席執⾏役員
ビジネスイノベーション本部⻑
1992 東京藝術⼤学 美術学部デザイン科 卒業、1992 三菱電機株式会社 ⼊社 デザイン研究所 AVシステム部 AV第1G 配属、2015 出向 内閣府(科学技術‧イノベーション政策)、2018 デザイン研究所 ソリューションデザイン部 次⻑、2019 デザイン研究所 未来イノベーションセンター⻑、2022 統合デザイン研究所 (2020年に組織名称変更 デザイン研究所 → 統合デザイン研究所) 所⻑、2023 本社 開発本部 開発業務部 部⻑、2024 本社 ビジネスイノベーション本部 副本部⻑ 兼 ビジネスイノベーション統括事業部⻑ 兼 事業推進部⻑、2025 上席執⾏役員 ビジネスイノベーション本部⻑
組織と本部の概要
三菱電機の事業領域
皆様こんにちは。三菱電機株式会社 ビジネスイノベーション本部の松原と申します。本日は「未来を切り拓く新事業創出」というテーマで、私たちが取り組んでいる活動のリアルな内容を、失敗談も含めてお話しさせていただきます。
まず、私たちがどのような事業を展開しているのか、そして私が所属するビジネスイノベーション本部(以下、BI本)がどのような立ち位置にあるのかをご説明します。
三菱電機は現在、大きく9つの事業本部を持っています。交通や電力などの「社会システム」、工場の自動化を支える「FAシステム」、皆様に馴染みのあるエアコンなどの「空調・家電」、さらには「防衛・宇宙システム」まで、非常に幅広い領域で事業を展開しています。また、これらの既存事業の強みを掛け合わせる取り組みも進めています。例えば、エネルギー管理と設備運用を効率化する「E&Fソリューション」や、工場設備を守る「OTセキュリティソリューション」などがその例です。
BI本のミッション
こうした既存事業の枠組みを超え、将来目指すべき社会を見据えて全く新しいビジネスモデルを創出するのが、私たちBI本の役割です。2020年に発足したBI本は、現在、2024年5月に打ち出した「イノベーティブカンパニーへの変革」に向けて、新たな価値創出に取り組む組織として活動しています。社会課題の複雑化やAIの急速な進化など、世界がこれまでにないスピードで変わる中で、私達自身も変わっていかなければいけない。リスクを恐れずに、新たな発想で、社会に貢献する価値を次々に創出していかなければいけない。こういった決意を、経営戦略では「イノベーティブカンパニーへの変革」という、強い言葉で述べています。その指針となるのが、「新たな価値の創出に挑み続け、未来をつくる(Keep on Innovating, Create our future)」というミッションです。このミッションのもと、自社での事業創出と、スタートアップとのオープンイノベーション推進の両輪で活動しています。
全社の新事業活動マップ
では、全社の中でBI本がどのような立ち位置で活動しているのか、こちらの図をご覧ください。
縦軸にプロダクト・ソリューション、横軸に顧客/市場を取っています。既存の事業本部は、これまでに培った技術や販路といったアセットを生かし、既存事業を軸に拡大する新事業(図中の①や②の領域)に取り組んでいます。一方で、BI本が担うのは図の右上の領域、つまり「新しいソリューション」で「新規顧客/新市場」を開拓する新事業(図中の③)です。
この領域は不確実性が高く、リスクも大きいため、すでに大きな事業を抱えている既存の事業本部では取り組みにくい側面があります。そこで、新事業創出に特化したBI本がまず先行して検討を進め、進捗に応じて関連する事業本部と連携していくという流れを理想としています。
新事業創出の仕組み
創出プラットフォーム
設立から6年目を迎え、私たちは「三菱電機の新事業創出プラットフォーム」として機能することを目指しています。新事業を生み出すには “千に三つ” と言われるように、数多くのアイデアを検討する必要があります。そこで私たちは、社内の各本部との連携はもちろん、社外のスタートアップや大学などからも広くアイデアを呼び込んでいます。
集まったアイデアは、BI本のプロジェクトとして段階的に事業性を検証しながら育成します。出口戦略としても、社内で事業化するだけでなく、カーブアウト(外部切り出し)やJV(ジョイントベンチャー)設立なども視野に入れ、柔軟な支援体制を整えています。
ステージゲート法
この数年間の活動で痛感したのは、新事業創出には既存事業とは異なる育成・評価の仕組みが必要だということです。そこで導入したのが「ステージゲート」というフレームワークです。
私たちのリソースには限りがあります。事業化できるかが不透明な初期段階の「タネ」に、いきなり過分なリソースを投下するわけにはいきません。この図のように、初期段階では少ないリソースで数多くのアイデアの検討を始めます。そして、ゲート(関門)を設けて段階的に評価を行い、事業化の可能性が高まった有望なアイデアにリソースを集中投資していきます。BI本では、概ね1年半から2年という短期間で事業化を目指すべきアイデアについて、このステージゲートで育成を行っています。
・・・(続く)
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