有識者セミナーレポート
丸紅の変革をリードするキーパーソンが語る
「変革を担う人材と組織をどう育てるか」
本レポートは、ビザスクが主催したセミナー「丸紅の変革をリードするキーパーソンが語る〜『変革を担う人材と組織をどう育てるか』〜」の講演内容をまとめたものです。総合商社である丸紅株式会社において、デジタル・イノベーション部(以下、DI部)を率いる大倉耕之介氏をお招きし、同社におけるDX推進の軌跡、特に最大の壁となりうる「人材」と「組織」の変革について、具体的な施策や独自の哲学を語っていただきました。
登壇者プロフィール
大倉 耕之介 ⽒
丸紅株式会社 デジタル・イノベーション部長
(兼) Digital Experts株式会社 代表取締役社長
1998年丸紅入社。化学品本部にて電子材料分野の事業運営・各種材料販売を担当。2017年、デジタル専門組織であるIoT・ビッグデータ戦略室(現デジタル・イノベーション部)の立ち上げに参画。デジタルのエキスパート集団を組成し、各組織のDX戦略を支援するとともに、丸紅グループ全体のDX戦略策定・実行をリードしている。
登壇者・会社紹介
ご紹介いただきました、丸紅の大倉です。本日は「変革を担う人材と組織をどう育てるか」というテーマで、私どもが今取り組んでいることをご紹介させていただきます。
まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。私は約20年間、主に化学品の営業をしてまいりました。その後、9年ほど前から丸紅グループのDX推進に携わっております。それまではデジタルの接点は個人的にはほとんどなかったのですが、思い起こしてみると、中学生の時の趣味がプログラミングでした。MSXという家庭用の廉価版パソコンが出た頃に、友人とプログラミングをしたりしておりましたので、ギリギリ「デジタル人材」と言えるかもしれません。
次に、会社紹介です。当社は創業から今年で168年目となります。従業員数は単体で約4,300名、連結対象の会社が約500社あり、グループ全体では5万人規模となります。事業内容は非常に多岐にわたっており、カーメンテナンス、植林、中古スマホ販売、コーヒー豆などの農産品、銅などの資源、化学品、電力インフラ、航空機、不動産、ファイナンス、アパレルなど、ありとあらゆる事業を行っております。
変革推進の最大の壁は「人と組織」
さて、本日のテーマに入っていきます。今回、「変革推進の最大の壁は人と組織であり、変革を担う人材と組織をどう育てるか」というお題をいただきました。
このテーマは、聞かれている皆様の状況によっても必要な視点がかなり異なると思います。総合商社のデジタルの取り組みがどこまで参考になるかは分かりませんが、私どもの活動内容をかいつまんで紹介させていただきますので、一つでも二つでもお持ち帰りいただけるものがあれば幸いです。
このテーマをもう少し具体的に落とし込み、個別の困りごとに分解してみると、皆様もこのようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
スキル系で言えば、デジタル専門人材やイノベーション人材の不足、現場でのデジタルリテラシーの不足、既存担当者のスキルの転換の難しさ、セキュリティやガバナンス人材の不足などが挙げられます。組織文化系では、変化への抵抗、失敗回避文化、自動化やAIへの不安、報酬や裁量のミスマッチなどがあります。そして、組織制度設計系では、サイロ化で横断プロセスが設計できない、プロダクトオーナー不在で意思決定が遅れる、現場の業務負荷が高くて変革の時間がない、KPIの矛盾、昇進や報酬が挑戦より安定を評価してしまう、といったことです。これら全てに触れると時間が足りませんので、これらに対する視点を持ちつつ、我々デジタル・イノベーション部がやってきたことをご説明させていただきます。
デジタル・イノベーション部の役割と活動
変革基盤構築と社内コンサル
私が所属するデジタル・イノベーション部(以下、DI部)についてご紹介します。我々のミッションは「丸紅グループの変革、特にDXを推進すること」です。
役割は大きく二つあります。一つ目は「人材開発と文化醸成による変革の基盤を構築すること」。そして二つ目は「社内コンサルとして事業創出、課題解決、成長支援を行うこと」です。実はこの「役割2」については、我々は「自分たちでやる」とは言っていないのが特徴です。生成AIの社内普及など自分たちでできるものは主体的に行いますが、ビジネス文脈ではあくまでも「サポート役」という位置づけにしています。これにはこだわりがありまして、DI部が主導して「変革します」と言うと、現場からは鬱陶しがられるだけだと思っています。もし自分の会社にそういう部署があったら、私でも鬱陶しいと思いますし、ついていこうとは思いません。
ですから、「やりたいことがある人」を手助けすることで物事がスムーズに進むと考えています。変革を進めたい組織がDI部をうまく使い、口実として活用してもらうのが一番成功するパターンです。もちろん、言われたことをそのままやるわけではなく、実態に合わせて調整し、最適な進め方を提案しています。変革の対象は、0→1の新規事業創出だけではありません。事業再生(マイナスからプラスへ)、そして事業成長(1→10→100)も我々の中では変革と捉えています。
・・・(続く)
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