活用事例
スポットコンサルを含めたプロジェクト包括的な取り組みで 「One Teijin Award」の表彰アイディア事業化をサポート(vol.1)
帝人株式会社
- 目的
- 業種
- 利用サービス
インタビューにご協力いただいた方
- 人事部 組織・キャリア開発グループ 久保田 はる菜様
ジャストアイディアでも出しあって、良いアイディアを具現化していく仕組みを
宮川:
「One Teijin Award」の取り組みの背景を改めてお伺いさせてください。
久保田氏:
「One Teijin Award」は2014年から3ヶ年の計画でスタートした新規アイディアのビジネスコンテストです。この取り組みが始まった背景としては、分社化により事業部間の壁ができてしまっているという組織的な問題意識がありました。
「所属する事業の商材はわかるものの、他事業部の情報が得にくい」、「事業部間で連携することでもっとできることはあるのではないか」といった声が社内からも上がっていました。グループ経営、グローバル経営を進めてきた中で、グループとしてのさらなる総合力を発揮していくために「One Teijin」を掲げ組織改革を推進してきました。
「One Teijin Award」はそうした組織改革の一環として、社長の支援のもと、事業横断の融合したイノベーションを創出することを期としてスタートしました。また、当時は「褒める」「推奨する」といった風土が希薄で、ひとり一人がモチベーション高く、意見やアイディアを全社や経営に発信する機会も多くありませんでした。そこで、ジャストアイディアでも出しあって、良いアイディアを具現化していく仕組みを構築しました。
宮川:
この3年の取り組みを振り返るとどのような変化がありましたか?
久保田氏:
「One Teijin Award」をスタートした当初は、ある種のお祭り的な取り組みに社員が本当に賛同してくれるのかという不安もありました。しかし、ふたを開けてみたところ初年度から400以上のアイディアが応募され、多くの社員が意見を発信する場を求めていたことが分かりました。1年目以降も同程度のアイディアの応募がありますし、集まったアイディアを実行に移している件数は、着実に増えていきています。
「誰でも、気軽に応募できる」を重視した設計
宮川:
ジャストアイディアをまずは出すフェイズから、アクションをして動かすというフェイズに移行されているのは素晴らしいですね。どのような方からアイディアの応募があったのでしょうか?
久保田氏:
やはり新規事業や研究開発に関わる社員からの応募が多くなってはいますが、アイディアはまんべんなく様々な事業・部署から集まってきています。応募状況を見ていると「アイディアを生み出すこと」や「つながる」ことに関心の高い社員が組織内に多数いることがわかります。応募の傾向という意味では、20代・30代の若い層の応募率は比較的高くなっています。
宮川:
ビジネスコンテストの取り組みの中で、応募数の伸び悩みの抱えている企業様もいらっしゃいます。「One Teijin Award」では、アイディアが集まるための工夫はどのようにされたのでしょうか?
久保田氏:
応募にあたっては、「誰でも、気軽に応募できる」ということを重視しました。「まずは、応募してもらう」ために、応募フォームをシンプルにし、価値やコンセプト、自分の想いをたくさん書けるようにしました。また、応募のハードルを下げるという観点では、アイディアを社内で投票する前提ですので、本名ではなくニックネームも可としています。さらに、応募方法もメールに添付して送るだけと、様々な事業所や工場で働く社員の負荷にならないようにしています。応募しやすい仕組みを徹底したことで、本当に良いアイディアがでてきたのではないかと考えています。
宮川:
応募にあたっての情報を精査し、「熱意」を伝えやすい情報に絞っているのは特徴の1つだと思います。また、ニックネームも可となると「ジャストアイディア」も発信しやすい心理的な効果が期待できます。また、応募方法も複数用意するのは事務局の管理上は工数がかかることもありますが、様々な観点で応募する社員の目線にたった取り組みになっていますね。
アイディアをアイディアのままで終わらせないためのビザスクとのパートナーシップ
宮川:
今回の包括的支援では、「One Teijin Award」でこれまで表彰されてきたアイディアの中から事業化に取り組むアイディアをお持ちの方に対して、ビザスクが事業化に向けたプロセスの伴走支援をさせていただいています。具体的には、スポットコンサルの提供に加え、定期的なメンタリングやプロジェクト進捗管理において関わらせていただいています。新規事業の創出をサポートする企業やサービスも様々ですが、今回、ビザスクを選定いただいた理由は何だったのでしょうか?
久保田氏:
「One Teijin Award」は3年間の活動を予定していましたので、最後の年度は何か新しいチャレンジをしたいという想いがありました。事務局として新しいチャレンジをすれば、応募する社員にもそのメッセージは伝わりますので、取り組み全体の熱量をあげていくことも狙いだと考えていました。
過去2年の取り組みで、アイディアは発信される状態になっていましたので、次のステップではアイディアをアイディアのままで終わらせないための次につなげることを重視しました。ビザスクには3万人以上のアドバイザーがいて、大手企業に対して新規事業のワークショップを実施した実績が多数あると伺い成功事例作りのパートナーとして関わっていただくことを期待しました。
宮川:
スポットコンサルのテーマは、新規事業の創出に向けた案件が比較的多いです。新規事業においては社内の知見が少ないことも多く、既存のネットワークでも十分な情報が得られないという課題はよくお伺いします。
帝人様もネットワークはグローバルにお持ちだと思いますが、外部からの知見に対するご期待が大きかったということでしょうか?
久保田氏:
新規事業のサポートとひと言でいってもその内容は様々です。アイディアを出した社員の自主性を尊重しながら、仮説の精度を高めていくためには、「こんな人に話を聞いて、あなたのアイディアがブラッシュアップできる」というのは大変貴重な機会になると考えました。実際にキックオフの際にアドバイザー候補のリストを提示したら、社員のこの活動へのモチベーションが一段高まったように見えました。
宮川:
ビザスクのアドバイザーは、製造業や化学業界の方も多数いらっしゃいます。また、求めたい経験を満たしているのはさることながら、「分野の第一人者」のようなすごい方にお話を聞けたという声をいただくことも多々あります。想像以上にすごい方に巡り会えたといっていただけるのは、我々も大変嬉しいです。
久保田氏:
ビザスクを今回パートナーに選ばせていただいた理由としては、「アドバイザーのネットワークを活用して、本人が直接社外の情報を収集できる点」、「新規事業創出ワークショップを実施していただいた実績があり、プロセスの設計や運営にも専門性がある点」などが主なところです。
また、やりとりをさせていただいている中で、フットワークの良い会社という印象を持っていたことも理由の1つかもしれません。参加している社員のフットワークをさらに後押しするような関わり方をしてくださり、柔軟なアイディアをだしてくれることも期待できました。事務局としても「ビザスクさんとなら、楽しくやれる」とも感じました。
宮川:
当社では、「イノベーションに挑戦する企業が、課題解決や意思決定の鍵となる知見に出会えるように」という考え方で新規事業の創出をご支援しています。そのためには、「フットワーク軽く、楽しみながら」という面も大切ですよね。個人的には前職の業界が帝人さんに近いこともあり、事業で目指されている方向性の共感性も高く、組織課題も肌感覚をもって理解することができました。実際のプロジェクトでもそのような勘所をしっかり支援の形にするように心がけています。
久保田氏:
そうですね。宮川さんが業界のことをよくご存知だというのも、安心感の一つでした。アイディアの改善もワクワクしながら進めていく上では、関わってくださる方が気持ちや感覚を理解して共感してくださることも成功の一つの要因ではないでしょうか。
宮川:
現在は、3名の方のアイディアの具現化に向けてスポットコンサルのご提供や進行管理などでサポートさせていただいています。サポートについてはどのように捉えていただいていますか?
ひとり一人へのきめ細やかな関与でアイディアの精度を高める
久保田氏:
驚いたのは個別のフォローをかなり丁寧にしてくださっていることです。各参加者に対して、個人の性格も捉えた上でそれぞれの状況やアイディアに応じたやりとりをしてくださっていることは、アイディアのブラッシュアップにも大きく貢献していると思います。スポットコンサルの後に、仮説の軌道修正が必要な場合、一人ではブレイクスルーのきっかけが掴みにくいものです。そのような時に「どうなっていますか?」と積極的に関与してくださることは、現業を抱えている参加者にとっては心強いですし、進行もスムーズになっていると感じています。
宮川:
新規事業の創出においては、ご本人の意向や考えをしっかりとらえながら進めていく必要があると考えています。手さぐりの状態でも一緒に伴走させていただくことで、より仮説の精度を上げていくことができます。さらに言えば、「顔見知りの経緯を分かっている」人からのコメントも役に立つと思いますので、参加者の方とは頻度高くやりとりさせていただいています。それによって「この方は、どのような目的で本当は何が知りたいのか」を的確に把握できるようになると感じています。
久保田氏:
そうですね。フォローアップというよりは教育的な見地も含めて、丁寧に対応いただいていると認識しています。社外の方が関わることで、定期的な報告にも健全な緊張感が出ますし、こうした取り組みのプロが関わってくれているという安心感もあると思います。事務局側では、取り組みの運営というレベル感で業務を進めるため、1人1人にそこまで決め細やかなサポートはなかなかできません。ビザスクとはとても良い役割分担で取り組みを進められていると感じています。
新規事業の創出の意欲が高く、実現に向けてもしっかりコミットできる組織に
宮川:
「One Teijin Award」の今後についてお聞かせください。
久保田氏:
今年度の取り組みで進行しているアイディアについては、ぜひ形にしていきたいと考えています。会社側もそのために必要な施策はしっかりと検討していく予定です。「One Teijin Award」という形での取り組みは今回が最後になりますが、この取り組みで社内の活性化は進んできました。情報を発信することで得られるものやビザスクのスポットコンサルで社外の情報にも触れながら新規事業を考えることの重要性も共通の認識になりつつあります。来年度以降は、これまでの取り組みで得てきたものをさらにバージョンアップさせながらさらなる組織の活性化を推進していきたいです。
宮川:
今回は新規事業というテーマでスポットコンサルを活用いただきました。人材育成という観点からスポットコンサルを捉えた時に、どのような可能性が考えられるでしょうか?
久保田氏:
これまでの企業研修では、会社がプログラムを用意してそれに則って学習をするというスタイルが一般的でしたが、様々な環境の変化により組織内の学習のスタイルも変わっていくと思います。会社がスキルを与えるのではなく、本人が自分で必要な情報や知見を見つけて主体的に考えて学んでいくようなスタイルに徐々に移行していくのではないでしょうか。そのような観点から、ビザスクのスポットコンサルは社外の経験者の話を収集して自分で学び取っていくという機会としても活用できるのではないかと思います。
宮川:
本日はどうもありがとうございました。
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