活用事例
ニコン初のスピンオフはなぜ「建設業界で売れる」と確信できたのか?
概要
- エキスパート:建設、エネルギー、物流、小売などの専門家(経営層、現場担当者)
- 依頼内容:どの業界の課題が深く、自社技術が活用できる余地があるか探索
- 実施施策:新規事業参入先特定のため、多様な業界の専門家への課題ヒアリング
ミッション
株式会社ニコンは光利用技術と精密技術をコア技術とし、カメラ、レンズなどの映像事業に加え、半導体露光装置やFPD露光装置などの精機事業、顕微鏡などのヘルスケア事業などを展開する企業です。株式会社ニコン 執行役員 経営戦略本部 副本部長 兼 投資企画部長である金澤様(お写真左)と、2025年3月に同社から初のスピンオフ企業として設立された株式会社クロスセクター代表取締役の宮脇様(お写真右)に、新規事業開発におけるビザスクの活用法についてお話を伺いました。
「全くわからない」新業界に切り込むためのインタビュー
Q.お二人のミッションと業務をお教えください
金澤様:
私のミッションは、本部長方針の下、全社の中長期的な経営戦略の立案、それを実現するためのM&A・資本業務提携・CVC投資・新規事業支援等の遂行及びサポートです。2030年のありたい姿「人と機械が共創する社会の中心企業」の実現に向け、次なる成長事業の創出に注力しています。、その中で、CVCを起点とした事業探索とインキュベーション活動の中で形になったものが、クロスセクターになります。
宮脇様:
私はもともと技術者としてニコンで働いていましたが、新規事業立ち上げに手を挙げました。そして現在は、ニコンの光利用技術と精密技術を用いて、建設業界の持つ社会課題を解決するための計測ソリューションの開発と、販売をさせて頂いています。
Q. 新規事業を立ち上げ、ニコン初のスピンオフ企業とするまで、どのような課題がありましたか?
宮脇様:
実は初めから「建設業界」の社会課題に絞って新規事業を検討していったわけではありません。自社の持つ光利用技術と精密技術を、これまで接点のなかった業界の課題を解決するために活用できないかと考え、どの業界が良いかということをそもそも調べなければなりませんでした。
業界を「建設業界」に絞った後も、我々は光利用技術のプロですが、建設業界のことは何も知りません。ビジネスモデルや商習慣、現場のリアルなニーズなど、業界を紐解くための一次情報が決定的に不足していました。
以前は関連業界の展示会に自ら足を運んで直接お目にかかって情報収集していましたが、丸1日かけても深く話せるのは平均3名ほどでした。これでは十分な市場理解は得られません。「どうすれば業界のリアルな声にたどり着けるのか」と考え、直接専門家にインタビューできるシステムがあればいいと思っていた時に、まさにそのもののサービスとしてビザスクを知り、利用を決めました。未知の業界について、これほど多くの当事者から直接話を聞ける手段は当時は他になかったと記憶しています。

現場のリアルなニーズを受けて開発された建設現場向けセンシングサービス「Frame Finder」
インタビューで「なぜですか?」を重ね、業界と顧客の理解を深める
Q. 課題に対し、ビザスクをどのように活用しましたか?
宮脇様:
まず、自社の技術を活かせる可能性がある業界のリサーチとして、建設の他にもエネルギーや物流、小売など、様々な業界の専門家の方、10名以上にインタビューを行いました。その中で「建設業界」の課題が最も深いと確信し、次はその業界に特化してヒアリングを重ねました。特に意識したのは、経営層から現場の係長クラスまで、あえて異なる役職の方に話を聞くことです。すると、同じ業界でも立場によって課題の捉え方が全く違うことが分かりました。俯瞰的に見ている方と、目の前の課題に集中している方とでは、出てくる言葉が違うのです。
当初は業界用語も分からず、得られる情報は「点」でした。しかし、インタビューを重ねるうちに知識が蓄積され、ある瞬間からそれらが「線」として繋がっていく感覚がありましたね。顧客の要望に対して「なぜですか?」と一歩踏み込んで質問できるようになったのも、この頃です。さらにインタビューと並行して20〜30名規模のアンケートも実施し、個人の意見に偏らないよう情報の精度を高めていきました。

「売れる」という手応えが、ニコン初のスピンオフを後押し
Q. ビザスクを活用したことで、どのような成果がありましたか?
宮脇様:
最大の成果は、「売れる」という手応えを通じて事業化への強い確信を得られたことです。インタビューを行う前は検討がつきませんでしたが、建設の現場において決定権のあるキーパーソンは誰なのか、どのような製品をどうやって打ち出せば買ってもらえるのか、解像度高く理解できたことで、サービス内容が研ぎ澄まされ、事業の方向性が明確になりました。
金澤様:
今回の新規事業は、ニコンの既存の事業部とは顧客軸が全く異なっていたこと、何より、建設現場に今ある課題を製品サービスに落とし込み、スピード感重視で販売する必要がありました。そのため、事業部の中のプロダクトの一つとしてではなく、独立した会社として立ち上げるのがベストだと判断したのです。この意思決定ができたのも、クロスセクターのチームがビザスクを活用し、市場の生の声という客観的な判断材料を用意していたからだと思います。
ニコンのDNAとスピード感の両立。挑戦し続けるカルチャーを醸成
Q. 今後の展望についてお聞かせください
金澤様:
ニコンには、長期的視点で技術を育てるDNAと新しいことに挑戦するカルチャーが両立しています。そして、現代のビジネスにはより一層のスピード感が不可欠です。今回のスピンオフは、その両立を目指す一つの答えだと考えています。我々ニコンは、独立したクロスセクターと良い距離感を保ちながら、オープンイノベーションを通じて彼らの挑戦を支えていきたいです。
宮脇様:
クロスセクターとしては、ビザスクで得た知見をさらに発展させ、建設業界の「労働力不足」や「インフラ老朽化」といった社会課題の解決に貢献していきます。そして、我々が得た新しい業界の知見をニコンにフィードバックすることで、両社の成長に繋げていきたいですね。特に、ビザスクのサービスは新規事業の立ち上げのタイミング以外にも、既存事業の課題解決にも活躍してくれそうなので、今後も活用できると考えています。

セミナー開催情報
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